天空の不夜城


前に見たことのある景色に出会ったり、以前よく聴いていた音楽が流れてきたとき、とても懐かしくかんじますね。

これに対して匂いや香りは、嗅いだ瞬間に自分でも忘れていたような記憶、とくに幼少期などとても古い記憶が思い出されやすいという特徴があります。

これをプルースト現象と言います。

小説家マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」という長編小説が、香りによって想起された記憶を辿って物語がはじまったことが由来です。

嗅覚の記憶は、他の感覚器の記憶(見たもの聴いたもの)よりも感情との結びつきが強く、その当時の感情そのものも思い起されるため、言葉で言い表わすことが難しいそうです。

先日、調香スタッフが花火の香りを創っていたのですが、花火といえば夏祭りですね。

花火の記憶ではないのですが、そのときに思い出した私自身の幼少期のときの古い記憶について書いてみようと思います。

 

「天空の不夜城」とは、秋田県能代市の伝統ある夏の七夕まつりの灯籠(山車、関西地方ではだんじりかな?)のことです。

母の故郷が能代市のため、物心つく前から大阪―秋田を往復する機会が多く、特に小学校に入ってからは、ひとりで飛行機に乗ってずっと夏休みを祖父母の家で過ごすことも多かったのです。

私が成長するにつれて行く機会もめっきり減って、祖父母が亡くなってからはほとんど行くことがなくなってしまいましたが、秋田で過ごした夏休みは避暑地でとても涼しく快適に過ごせたのを覚えています。

東北の七夕祭りといえば、青森ねぶたや秋田の灯籠祭りが有名ですが、ほとんどが8月第一週目の同じ時期に行われます。

小さい頃からこの時期に合わせて母が帰省していたので、私はずっとこの能代七夕を観ていました。

天空の不夜城はとても大きい灯籠ですが、昭和から少し前までは電線の問題で小さな灯籠にせざるを得なかったそうです。

でも当時小さかった私にはそんなこと関係なく、ものすごく大きくて迫力のある灯籠に見えていました。

すぐ近くの大通りを通るので、お祭りの日は朝からワクワクして落ち着かなくて、まだかなまだかなと、大通りと祖父母の家を何度も行ったり来たり。夕方になってようやくお囃子の音が聞こえてくると、それはもう、最高潮にワクワクしたのを覚えています。

懐かしいなーと、ふと思い出してネットで検索すると、この天空の不夜城のサイトと動画を見つけました。平成24年に電線地中化が完了したため、大きな灯籠が蘇ったそうです。

http://www.noshiro-huyajou.jp/index.html

能代市も例外なく過疎化が深刻ですが、こんな風に地元にいる若い方々が伝統と活気を取り戻そうとしているのはすごくうれしいですね。

しかもそれがいつでもネットで見られるなんてすごい便利な時代。

観に行きたくても少し遠くてなかなか行くことができなかったので、この豪華な灯籠と哀愁を漂わせた音色のお囃子の動画を見て、懐かしさで感激しました。

でもやっぱり、現地に行かないと分からないのが「空気感」。

匂いは、温度や湿度と同じようにその場の空気に漂っているものです。

温度や湿度にその場の匂いが混ざって、その「空気」そのものが身体の記憶になっているのでしょうね。

能代七夕は打ち上げ花火の伝統はないので、残念ながら花火の匂いを嗅いでも幼少期の夏祭りを思い出すことはないのですが、小さな頃に、大きな打ち上げ花火が上がる夏祭りによく連れて行ってもらっていた記憶を持っている人は、花火の火薬の匂いで懐かしさを感じられるのでしょうね。

私の場合は・・・祖父の仕事場が家の前の金属加工の工場でしたから、機器に注す油と金属の匂いです。

祖父母の家の記憶や能代七夕の記憶は、ずっとそこに住んでいたわけではなく夏のあいだだけの刹那的な記憶だからこそ、当時の感情とともに思い出すのだと思います。

帰らないといけない日が近づくにつれて、だんだんと気持ちが暗~くなってきて、当日「帰りたくない!」とよく駄々をこねたのを覚えてますから( *´艸`)

 

遠く離れた土地の情報が瞬時に分かるインターネット、あたかもそこにあるかのように見えるARやVRなど、便利な技術が次々新たに開発されているにもかかわらず、匂いや香りに関する技術はまだ未開発が多いですね。

私は出自がアロマセラピストですから、香りで人々が癒えるお手伝いをしていきたいと思っています。

癒される=「身体がリラックスする」や「自然植物の力」ということだけではなく、

最新技術をコラボレーションさせた匂いや香りの力で、忘れていた古い記憶や感情を蘇らせることで、自分が生きてきた歴史や証を肯定的に捉えるようになること=癒されること

だと考えて、それをビジョンにしています。

香り空間プロデュースScenery Scent kanae

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